三俣蓮華岳と双六岳 (後編)
晩御飯を作ります。今夜はアルファ米と野菜カレーです。
アマノフーズの野菜カレー。お湯で戻すだけって楽ちんですよね。
モンベルのアルファ米が炊き上がりました。お湯で戻して15分待つだけでけっこう美味しいんです。
こんな北アルプスの奥地でテント泊カレー。最高としか言いようがありません。
雲行きが怪しくなってきました。
と、かなりの土砂降りです。
雨は夜になって強まり、降り続きました。歩いている最中に全く降られずここまで来れたのはほんとにラッキーでした。雨音を聞きながら9時ごろ眠りにつきました。
朝4時。目覚めの珈琲を淹れます。
テントの中で頂く早朝珈琲は格別です。
4時半過ぎ。東の空が朝焼けに染まり始めます。
朝ごはんは棒ラーメン。
鷲羽さんがピンク色の空に包まれていきます。
北に目を向けると水晶岳はオレンジ色の空の中。
西の空もオレンジです。
北アルプス百名山の朝焼けショーを四方に展望しながらちゅるちゅると食べてます。なんて贅沢な時間でしょうか。
朝食後、三俣山荘でトイレを済ませて今日これから3時間置きの地域天気予報と最新の登山道状況を小屋のスタッフさんに確認しに行きます。
昨日の予報では午前中晴れで午後から雨だったけど予想通り変わりました。9時までは曇り。12時まで曇り時々雨。午後は本降りの予報に変わりました。槍方面を見ればどんよりとした雲の塊が赤肌の硫黄尾根に向かって動いています。
次々と各方面に出発して行く登山者皆んなに「行ってらっしゃい!」と暖かく送り出すスタッフさんの笑顔が素敵。でも笑顔の奥に登山者一人一人の様子をしっかり観察しているような眼差しを感じました。いざとなったら救助に向かうのはまず山小屋のスタッフさんたちですもんね。きっと色んな緊急事態に対処なさってきたんだろうな。僕も気を引き締めて下山しなくちゃ。
6時前。テントに戻ってきました。
名残惜しいけど撤収開始です。一つずつ丁寧にザックの中に仕舞っていきます。
テント以外のパッキング完了。
いや、ほんとにここでキャンプしたんだなぁと感慨に浸りながら最後にテントを畳みます。
またいつか三俣山荘にきっと来よう。そう誓って下山にかかります。
朝6時半。北鎌尾根を遠望しつつ三俣蓮華岳の尾根を登って行きます。ハイマツのトンネルをいくつも抜けて三俣分岐を目指します。
振り返ればまだ鷲羽さんのシルエットがどーんと見えてます。
巻き道と稜線ルートとの分岐点まで戻ってきました。帰路は三俣蓮華岳の頂上方面に向かいます。
三俣蓮華岳頂上です。ここは岐阜、富山、長野の三つの県境が交錯する地点です。標高2800mの稜線に上がるとすっかりガスに巻かれてしまいました。視界なしです。
稜線ルートを双六岳に向かって歩きます。
度々完全ガスに巻かれます。10m先が見えません。方向感覚を失わないようにコンパスを見ながら慎重に歩きます。
ガスに巻かれて視界が悪くても高山の花はそっと足元で咲いています。なんだか励まされます。これはアオノツガザクラ。
咲き始めたばかりのタカネヤハズハハコ。
「高嶺矢筈母子」と書き花言葉は「愛しむ」。
別名「タカネウスユキソウ」。
日本海側からどんどん雲が上がってきます。風があまりないことは幸いでした。
雪田を越えてしばらく歩いた頃…
さっきまでガスに巻かれていた西側の景色が一気に晴れ渡りました。北の俣岳へと続く壮大な稜線の中にどどーんと鎮座する黒部五郎岳が現れました。この瞬間が今回の山旅で見た景色の中で一番印象的でした。氷河の痕跡を残す黒部五郎のカールが感動的なものだということはよく知られていますが実際に初めてそれを遠望したときのこの感動は一言では言い表せません...。
東に目を向ければ北アルプスの盟主である槍穂の雄姿。この稜線ルートのどこを見ても壮大な景色は忘れがたいものとなりました。
双六岳頂上と中道との分岐まで来ました。
予定通り双六岳頂上へ向かいます。ザックをここにデポして身軽に。往復30分でした。
キバナシャクナゲがたくさん咲いています。
双六の頂きです。
さっきまで晴れていたのに一気にガスに包まれました。
このクジラの背中の先に槍ヶ岳が見える景色を見たかったですが今回はお預けですね。
デポしておいた中道分岐まで戻って来ました。
チングルマが咲いています。綿毛になった姿も見たいですね。
一日ぶりに双六小屋まで戻って来ました。
往路では時間があまりなかったので長居しなかったんですが帰路ではここでお昼ご飯休憩を取ります。三俣山荘キャンプ場を出たのが朝の6時半。ほとんどガスに巻かれて視界がよくない稜線を無理せずゆっくり慎重に歩いてここまで戻ってきました。この時点で午前9時過ぎ。途中、中道分岐でザックをデポして双六岳を往復。再び中道経由で双六小屋へ降りてきましたが3時間弱かかりました。三俣山荘で三俣蓮華岳の山バッチ、ここ双六小屋で双六岳の山バッチをゲットしました。
無事にここまで来れたことに乾杯。1時間ほど双六小屋でのんびりさせて頂きます。
雨が降ってきたので小屋の中へお邪魔させて頂きました。
お。ギターだ。
自宅でオープンGチューニングでよく弾いたりしてます...。
ここの名物、五目ラーメンです。
小屋の美人なお姉さんが作ってくれました。
感謝!あったかいし美味い。
午前11時双六小屋を後にしました。
午後0時過ぎ。鏡平山荘まで戻って来ました。雨が一旦上がりました。これなら水面は鏡になるかな。
またちょっと降り出してきちゃったけど逆さ槍ゲットです。
【ツマトリソウ】
「褄取草」
鎧の褄取に似ているのが元だとか。花言葉は「純真」「安楽」
小池新道はほんとに花がいっぱいです。
【ゴゼンタチバナ】
「御前橘」
花言葉は「古風」「移り気」
【コイワカガミ】
「小岩鏡」
花言葉は「忠実」
【ミツバオウレン】
「三葉黄連」
花言葉は「栄誉」
【キヌガサソウ】
「衣笠草」
古代王朝時代にその名の所以があるとされる。絹の笠に似ていることから衣笠草。花言葉は見当たらず...。
秩父沢まで戻ってきました。
ここから先は林道歩き。ワサビ平小屋を経て新穂高までラストスパートです。雨が本降りになって来ました。
雨の林道歩きではこの折り畳み傘が役に立ちました。エバニューのカーボン製の傘でなんと100gを切る軽さです。モンベルの傘が128g。これは驚異的。
ハイマツ帯や樹林帯の中では障害物が多くてとても傘はさせません。ましてすれ違いのときには危険です。新穂高の長く広い林道などでは活躍しますね。雨でしっとりした衣類も速乾性ゆえに傘をさして歩いているうちに乾いちゃいます。風さえ強くなければの話ですが紫外線の強烈な稜線で日傘としても使えますね。
なんと90g。
こちらは158g。
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午後3時前。
無事に下山しました。
この後、平湯温泉でひとっ風呂浴びて帰りました。
今回往復で37キロの道程をテント泊装備18kgのザックを担いで一泊二日で歩きました。ゆったり安心して行くなら新穂高から双六小屋までで一泊してその先でもう一泊がオススメです。今回は往路では双六小屋に予定通り13時前に到着したことと復路でも嵐のような天候の大きな崩れはなかったことが幸いして何とか行って来れました。まだまだ経験が浅い身ですので単に運が味方しただけだと思います。双六より先はじわじわとザックの重さが肩に食い込みなかなかきつかったです。そこはトレーニング不足を痛感しました。身軽なULスタイルや小屋泊装備なら日頃運動をしている方ならこの距離は充分に射程圏内だと思います。
なんやかんやで午後6時過ぎに無事帰宅。半日前に三俣山荘にいたことがもう嘘のような感覚です。そもそも昨日自宅を出発して今日帰って...なんだか狐に抓まれたような心地ですがほんとに鷲羽さんの麓まで行って来たんですよね。その証拠に...
ちゃんと山荘でゲットした三俣蓮華岳バッチ(キヌガサソウ)と双六岳バッチ(黒百合)がこうしてあるわけです。ちなみに左下のコマクサは先月の燕岳バッチです。
また一つ、いつか行ってみたかった場所に歩いて行くことが出来ました。達成感たっぷりです。
山でテント泊するのもまだ3度目ですがちょっと考え方が変わって来ました。今まで人と違うモノばかり追求する癖があったんですがモノはあくまで道具であって自分にとって使いやすければど定番モノでも何でもいいって考えに変わりました。
大切なのは自分にとっての使いやすさとその道具に対する信頼と愛着なんだってことを山歩きの色んなシチュエーションの中で山道具に教えられた気がします。
そんな愛すべき道具を永く大切に使いつつ一個一個の山旅が心の中で永久の風景となっていることに感謝するようになった今日この頃です。
最後までお付き合い下さいましてありがとうございました!