三俣蓮華岳と双六岳 (前編)
2019.7.17-18 百名山鷲羽岳を望む三俣山荘キャンプ場にて
今年は人生のやってみたい事リストから「テント装備を背負って絶景を歩いてみたい」に挑戦しております。4年前から日帰り登山は色々とやってました。そろそろステップアップしてアルプスにテントを背負って登ってみたいなと思いまして、毎朝トレーニングを積んできました。
実は記事にはしていないんですが5月に八ヶ岳最南峰の編笠山と西岳にお試しでテント泊登山に行ってきたのでその練習登山も含めると今回で3回目です。
青年小屋のテント場で初めてのソロテント泊登山を体験してたくさんの反省点が洗い出されました。
まず体力、脚力。基礎トレがないとフル装備のザックを担いで1000m以上登っていくのは厳しいことに気がついたことに始まり、ザックそのものの正しい背負い方の手順やパッキングの方法で重心がかなり変わってくることなど色々と勉強になりました。
ソロテント泊登山本番第一弾は6月の燕岳&大天井岳でした。北アルプスの入門地としてメジャーな燕岳。北アルプス三大急登の合戦尾根はほんとにきつかったけど雲海も見れて最高でした!
そして今月は憧れの絶景山岳野営地の一つ、鷲羽岳の麓にある三俣山荘キャンプ場に行って参りました。新穂高(1103m)から三俣山荘キャンプ場にてテント泊、復路で双六岳(2860m)を経由して新穂高まで帰る往復37キロ、最大標高差1757mを一泊二日の日程で山旅して参りました。
まさに雨ばっかりの2019年の梅雨ですが奇跡的にひと月前から予定していた山行日の予報は晴れです。当てにはなりませんが...。下界と山岳地帯との気温差はご覧の通り。高山市内が30度でも山の上は12度です。朝方は一桁。
二日目は午前中まで晴れマークで午後に曇りになってます。でも天気図を見ると前線が北アルプスの真上に居座り続けているのでかなり不安定な状況には変わりなさそうです。何となく午前中には天気が崩れそうな予感がします。午後からは東シナ海で台風に変わった熱帯低気圧の影響で雨は強まりそうです。今回は雨覚悟の下山です。(下山翌日にこの台風の影響で長崎五島列島に線状降水帯が発生)
今回の山旅は北アルプスのど真ん中、百名山の鷲羽岳を望む絶景のキャンプ場、三俣山荘キャンプ場を目指します。深山荘の登山者用無料駐車場からスタートして左俣林道、小池新道、弓折乗越、双六山荘、巻道ルートを通って三俣山荘キャンプ場を目指して行きます。踏む山頂は二座。岐阜、富山、長野の三県の県境が交わる三俣蓮華岳とサッカーできるくらい広いクジラのような山体が特徴的な双六岳です。双六岳は花の百名山としても有名です。
モンベルのトレッキングパック55。
重さを感じない背負い心地で評価の高いオスプレーのアトモスAG65も持ってるんですが毎朝5時に近所をこのままの状態(18Kg)のこのザックを担いで2.5キロ歩いてトレーニングしているうちに体がこのザックに慣れてしまいました。余計なもんがなくてすっきりしたデザインと「重いもんは重いんじゃ。誤魔化さずに己を鍛えろ」と諭さんばかりのこのザックに惚れてます。同じ内容でパッキングしてみるとアトモスAG65は確かに重量以下に感じるまさしく(AG)アンチグラビティーなザックです。ただウエストのポーチって言うんですか、そこが大きくて歩くとき邪魔に感じるんです。ここは好みの問題ですね。いっぱい入っていいじゃんて人もいるだろうし。トレッキングパック55のウエストポーチはスマホ(iPhone6s)がギリ入るくらいの大きさしかありません。55リットルと謳いながら雨蓋部分までびっしり収納できるので65リットル程度のキャパはあります。背中の通気性はありません。でも今回の夏山の北アルプスはご存知の通り最高気温で12度から15度で涼しいし朝晩は一桁台です。背中が暑くてしょうがないということはまずありませんでした。
テント、マット、寝具、雨具、着替え、防寒着、食料、水、バーナー、コッヘル、応急用品、カメラ、などなど総重量18キロ。
変わった装備としては...
- 以前下山中の登山道にスズメバチが居座っていて困った経験からスズメバチ撃退スプレー
- 三俣山荘キャンプ場はコバエや虫が多いとの情報からディート入り虫除け
- 標高2600m前後の稜線歩きは焼けるのでサンオイル
- 今年の奥飛騨は熊の目撃情報が例年よりも多いとのことで熊撃退スプレーも装備しました。何年か前に笠ヶ岳クリヤ谷で熊に襲われたものの巴投げで撃退したという凄い登山者がいましたがそんな猪熊ジゴローみたいなこと不可能なので撃退スプレーで備えます。重くなるけど万が一です。
まずは深山荘登山者用無料駐車場(標高1090m)からスタートです。
新穂高登山指導センター前です。予報通り天気は晴れ。晴れれば天国、雨なら地獄ほどの差がある山旅ですが今日はラッキーです。
蒲田川左俣谷。雪代が入って水量は少し多めのようです。
長い林道歩きのスタートです。
カーブミラーで自撮り...。
ファイントラックの「ニュウモラップフーディ」。これが絶妙な山アイテムでして、ウィンドブレーカーでもあるし小雨程度なら撥水するし…生地が柔軟でカッパみたいにガサガサと音がしないんです。脇下から下に向かってリンクベントというジッパーが付いていて衣服内に溜まった熱を一気に放出してくれます。小雨が降ったり止んだりの微妙な天候や風が吹く稜線など刻々と変化する状況にほとんどこれ一つで対応できます。ただ一つ難点は...値段ですかね。。
舗装路と砂利道が交互に現れます。
ゲート横からお邪魔します。
まずはワサビ平を目指して歩きます。
小池新道を登って弓折乗越まで上がって双六小屋、三俣蓮華岳のカールの麓を歩いて三俣山荘がゴールです。いやはや遠い。
朝6時。涼しくて気持ちの良い林道歩きです。
緊張するな~。。
傾いてますかね…。とりあえず渡れました。欄干が雪の重みでぐしゃぐしゃに曲がってます。
これが最強にキツイと評判の笠新道ですか。たぶん一生ここは登らないなぁ。
新穂高登山者指導センターから1時間ほどでワサビ平小屋に着きました。
ザックを下ろして一休み。ちなみにバンジーコードで括り付けられているのはニュウモラップフーディです。稜線に出て寒かったら着ようと思います。
水分補給とエネルギー補給です。今回の山行で持参したカロリーメイトは8袋(16本)=1600キロカロリー。上りで3袋、下りで2袋、予備で3袋。
ワサビ平小屋名物ですね。
夏場の林道の合間に冷えた果物や野菜があったらそりゃ食べたくなりますって。
休憩を終えて林道歩き再開です。前を素敵な夫婦が並んで歩いてます。なんかいいなぁ。サトウハチローの詩みたいだ。
事前に調べていて一番怖そうなポイントに来ました。しっかし2、3m落下って...。
あ、確かにやばそうです。雪渓おそるべし。
こちらは雪庇。これも危ない。さっきの雪渓も下は空洞状態でしたね。踏み抜いてこの高さから転落したら荷物18キロと体重65キロ合わせて83キロの衝撃が。それに崩れてきた雪の塊に埋もれる可能性も。…恐ろしや。
雪渓もやり過ごして爽快な山歩きです。まだ素敵なご夫婦の後を距離を保って歩いてます。
奥丸山の分岐まで来ました。
ここを渡って槍ヶ岳まで行くルートもあるわけですか。いつか歩いてみたいな。
コースタイムで鏡平まで3時間半。双六小屋まで5時間50分。行くぞ~!
平坦な道も終わってここから小池新道、本格的な登りです。
登りやすいように石段になってます。山小屋の皆様の仕事に感謝です。確か双六小屋の大将さんて小池さんでしたよね。てことはその小池さんが整備なさってるのかな。歩きやすいです。ありがとうございます!
向こうに100名山の一つ、焼岳が見えます。
前にULスタイルの若者3人。かっこいいな。PEAKSによく出てくるスタイルそのものですね。ほんとに軽そう。ULってたしかテント泊装備でも総重量一桁の人もいるんですかね。だとしたら僕の半分じゃないですか。軽い分遠くまで歩けそうですね。でも僕は41になってむしろ体を鍛えたいのでオーソドックスなテン泊重装備ザックでがんばりたいと思います。
白山石楠花の花が綺麗です。
秩父沢まで来ました。
秩父小沢で顔を洗いました。冷たくて気持ちいい!
1時間おきにザックを置いて肩を休めます。さっき見たULスタイルの方々が目に焼き付いてさらに重く感じる。あ、いや。気のせいです...。
車百合のオレンジ、綺麗です。
チボ岩まで来ました。
イタドリが原まで来ました。
シシウドが原で一休み。歩いてきた奥丸山分岐の橋があんなに遠くに見えます。
新穂高から1000m上がって来ました。
この岳樺がちょいちょい道を横切ってまして。足元ばかり注意してると頭ぶつけます。いや、ぶつけました。
熊の踊り。見てみたい気もします…。くまモンみたいなゆるキャラ音頭だったらここでコーヒー淹れながら鑑賞したい。
あと500mで昼メシ!
ついに鏡平山荘の木道です。
おぉ、ここがよく写真にでてくる逆さ槍の鏡池ですね。
ガスって槍なし…。
午前11時。新穂高から5時間。ほぼコースタイム通りで鏡平山荘到着です。さあお楽しみの山荘ランチタイムじゃっ!
山旅の楽しみの一つ。山荘で頂く山荘飯。重いザックを下ろして休憩です。
生一丁っ!
醤油ラーメンを注文しました。控え券に具のレイアウトが書かれてますね。
これが美味かった!1000円もする山のラーメン。下界から荷揚げしてる分高い。が、普通に美味い!
教養度を測られてみました。
まあまあだね。
楽しいお昼休憩でした。ありがとう鏡平山荘さん。
槍・穂高、西鎌尾根が見渡せるナイスロケーションな山小屋です。
腹ごしらえを済ませて出発!
鏡平から弓折乗越間の残雪。
ヨツバシオガマですね。
[四葉塩釜]
葉っぱが確かに美しい。葉まで綺麗。浜で綺麗。浜で綺麗は塩釜。だから四葉塩釜...。ちょっと強引じゃ。
花言葉は「誘惑」。個人的にはBELOVEDの方が好きです。違うか。
オオバキスミレです。
[大葉黄菫]
花言葉は「慎ましい喜び」
なるほどね。慎ましいかも。
サンカヨウです。
[山荷葉]
雨に濡れると花びらが半透明になる。花後の実はブルーベリーみたいで食べれる。
花言葉は「親愛の情」
[信濃金梅]
葉っぱがギザギザで花は少し大きめです。
花言葉は「恋・呪い」
[白山一華]
花言葉は「幸せを招く花」
鏡平山荘を遠望。
弓折乗越の立て札が見えました。
この中にいます。わかります?
完全に保護色ですよね。
ここです。お腹の白い部分が見えてます。ヒナがそばにいるようです。天敵の鷹などが飛んでいない曇天などはこうしてハイマツ帯から外に出てくることが多いそうです。
クロユリベンチ付近で標高2600m。
ベンチ発見。楽しみにしている黒百合にもうすぐ会える。
おおおおおおおおおおお!!!
素敵過ぎます。黒いってのがまた渋い。魔女宅でもおかあさんが言ってました。黒は女を美しくするんだって。
ソバナのブルーの綺麗だけどやっぱり双六エリアといえばこの花ですよね。
[黒百合]
花言葉は「恋・愛」と「呪い・復讐」
呪いについての俗説は「佐々成政と黒百合」のストーリーが有名ですね。
ミヤマリンドウ
[深山竜胆]
花言葉は「正義」
古来から漢方薬として親しまれてきた花。根をすり潰した粉は熱さましの効能があるがとても苦く、それが竜の胆とされた...そうです。
クロユリベンチで西鎌尾根を眺めて小休止。
樅沢岳と前樅沢岳を前に見ながら山道をしばらく歩いて行くと...
バっと景色が開けて赤い屋根の双六小屋が現れました。これには感動。
小屋の向こうには鷲羽岳がどーんと聳えます。
一旦降りて再び登り返します。
目の前には双六池。さんざん写真で見てきた景色が目の前に。じーん。
午後1時過ぎ。新穂高から6時間半。
無事に双六小屋まで到達できたことにまず感謝です。
元気も回復してさらに奥へ。
鷲羽の麓、三俣山荘を目指して進んでいきます。
双六分岐まで来ました。往路では巻道を使います。正面に丸山2854m。その隣に三俣蓮華岳2841m。一番右手に祖父岳(じいだけ)2825mです。
「1時間歩いて5分休む」
マイルールです。
肩を休ませながら進みます。
三俣蓮華岳カールはハクサンイチゲやミヤマキンポウゲのお花畑です。
北鎌尾根ですね。ギザギザです。よくあんなとこ挑戦する人いるなぁ。凄い人がいるもんだ。
三俣蓮華岳の残雪を源に冷たく透明な北アルプスの水が流れていきます。
赤肌の硫黄尾根の向こうに先月歩いた表銀座と大天井岳2922mが見えます。
鷲羽岳が正面に見えてきました。
午後3時過ぎ。18.3Kmの道程を経てやっと着きました!
「憧れの山岳風景」一つ達成の瞬間をカメラに納めます。
なんつー美しさでしょうか。ここはほんとに日本なんでしょうか…。
ここがまさに黒部の山賊の舞台。戦国時代に佐々成政軍が針ノ木峠を越えて行ったというのもすごい話ですが...。高天ヶ原の金脈伝説やら成政の埋蔵金伝説やら僕にとってロマンが沢山詰まってるエリアです。
とにかく感動です。じーーーーん。
プロジェクトXの放送を拝見させて頂いて以来、いつか来てみたかった三俣山荘。黒部山賊。北アルプスの奥地。
ほんとに来てしまった。
雲の平。いつか行ってみたい場所が歩いて3時間のところ。
テント泊受付を済ませていざテン場へGO!
愛幕トレックライズ1と鷲羽岳様。
「憧れ」達成です。
絶景を前にテントの中でまったり宮城峡タイム。
スキットルにはスイートな宮城峡。
そこに山荘で買ったネクター。
バームロールを摘んでまったり。
午後6時。
山の端に日が沈んでいきます。
後編へつづく